父親を亡くした友人は以前からよく言っていた。
お父さんに早く花嫁姿を見せてあげなきゃ・・それが一番の恩返しだから・・と。
そしてめぐり合えた最愛の相手を親身になって支え続け、結婚した。
何度も、彼の事業が上手く行かない事がきっかけの些細な喧嘩で不仲に成りかけて、その都度私の携帯電話が夜中に鳴った。
私と彼女は昔恋人同士だった。
ほんの一年程度だが。
彼女の事が好きで、出来る事ならもう一度やり直したいと思っていた私は、不謹慎にもそんな彼女を何度となく外に連れ出し、その度に彼との別れを勧めていた。
彼女は私の助言(悪魔の囁きだった)を一通り聞くと、「ありがとう、少し気が楽になった」と言って帰っていく。
私は彼女の純真さが向けられている相手に対し嫉妬するしかなかった。
自分が他に好きな女性を作って彼女を振ったのだという後ろめたさがいつも付きまとっていたからだ。
彼女は、私が別れを告げた時、涙をぬぐいながらこう言った。
「私は早く結婚しなきゃいけないから、あなたのことは諦めるね・・」と。
その時の私は、世の中の結婚願望が強い女性のことを一様に、どこか蔑んで見ていた気がする。
自分で生きられない、・・依存心ばかりが強い、弱い人種なのだと。
彼女の、結婚したい理由も、彼女の性格や生い立ちから判断すれば、それに該当しない事などは直ぐに判断できたはずなのに、・・その時の私の傲慢さと冷酷さには腹立たしささえ覚える。